【新型コロナウイルス法律相談】家賃滞納ですぐ退去させられるのか

【新型コロナウイルス法律相談】家賃滞納ですぐ退去させられるのか
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新型コロナウイルスで家賃が払えない人が多発

 

4月7日から始まった緊急事態宣言で、多くの人が職を失ったり休職に追い込まれたりと窮地に追い込まれています。

特に飲食業は壊滅的な状況で、飲食業に従事する方々はお店はもちろん自宅の家賃も払えないという状況も多いようです。

 

一部報道では、タリーズコーヒーの創業者 松田公太氏らが中心となって「家賃支払いモラトリアム法」なるものの策定を目指しているという動きもあるようです。

外食産業の声、生き残るための提言「家賃支払いモラトリアム法」策定を

同法の骨子は(1)不動産オーナーにテナントとの話し合いに応じることの義務化(2)家賃の減免交渉に応じることの義務化(3)不動産オーナーが銀行借り入れなどの問題で猶予・減免ができない場合は、政府系金融機関が家賃の立て替えを行う。申請はオーナー、テナントの合同で行う。立て替えた家賃はコロナ終息後、金融機関がテナントに請求する–というもの

 

民民の交渉ごとを国が法律で縛るということは、契約自由の原則に反することになるので、上記のような法律の成立は現実的ではないかと思いますが、家賃は払わなくても良いという風潮の高まりを感じます。

 

それでは、実際に家賃を払わない場合に、賃借人は物件のオーナー(大家さん)からすぐに賃貸借契約を解除され、物件から退去させられてしまうのでしょうか。

どの程度の滞納で退去されてしまうのでしょうか。またオーナーはどのような手続を踏まなければならないのでしょうか。

 

以下で解説したいと思います。

 

 

賃料不払いは3ヶ月が解除の目安

 

例えば、賃貸しているマンションの家賃を1ヶ月滞納した場合に、そのマンションのオーナーは、すぐに賃貸借契約を解除して、借主を追い出すことができるのでしょうか。

 

答えはです。仮に賃貸借契約書で、「1ヶ月でも家賃を滞納したら契約は解除」という特約があっても同様です。

 

民法上、契約の不履行があった場合には、不履行の相手方に相当期間の催告をし、それでも履行がなければ契約を解除できるとされています(民法第541条)。

しかし、賃貸借契約のような継続的契約においては、最高裁判所の判例によって、賃貸人と賃借人との間の「信頼関係の破壊」に至るような事情がなければ解除はできないとされています。

 

そして、一般的に、1ヶ月程度の家賃滞納では、「信頼関係の破壊」はないというのが、日本の裁判所のスタンスです。

仮に、1ヶ月でも家賃を滞納したら契約は解除できるという特約を事前に締結していても、かかる特約条項は無効として扱われるので、結論に変わりはありません。

 

それでは、どの程度の滞納があれば、オーナーは賃借人を追い出すことができるのでしょうか?

一概には言えませんが、一般的には家賃の滞納が3ヶ月程度に及んだ場合、賃貸人と賃借人との間の「信頼関係の破壊」があったとして契約解除が認められることが多いです。

 

したがって、現在コロナの影響で家賃を滞納している人たちも、1ヶ月程度の滞納であれば、すぐに追い出されることはないので、安心してください。

 

 

家賃の滞納以外の契約解除・解約はあり得る

 

ただし、注意が必要なのは、家賃の滞納以外の理由で追い出されてしまうことはあり得るということです。

例えば、借りているマンションをオーナーに無断で転貸してしまったり、賃貸借契約で禁止されている行為(迷惑行為や無断改修など)を行えば、それによって信頼関係の破壊があったとして、賃貸借契約が解除されてしまう可能性はあります。

 

また、家賃が払える見込みがないとして、オーナーと借主がお互い同意の上で賃貸借契約を合意解約することもあるでしょう。

法律はお互いの真摯な同意に基づく賃貸借契約の解約までは禁じていません。

 

このように、賃貸借契約は賃料不払い以外の解除・解約があり得ることには留意が必要です。

 

 

オーナーによる強制執行はダメ(自力救済禁止の原則)

 

それでは、賃貸借契約の解除ができる状況にあるとして、オーナー自ら借主の部屋から荷物を運びだし、鍵を架け替えたりすることはできるでしょうか。

法律は、オーナーが自力で借主を強制退去させることを禁止しており、オーナーが上記のような対応を取ることはできません。

これを自力救済禁止の原則といいます。

 

そのため、強制的に借主を物件から退去させようとする場合、オーナーは裁判手続等を利用した民事執行法に基づく強制執行を行わなければなりません。

強制執行は裁判等の手続に時間もかかりますし、執行官等の日当もかかるためお金もかかります(荷物量にもよりますが、10〜50万円はかかります)。

 

このように、日本の賃貸実務は、オーナーに対して多大な負担となり、逆に借主にとってはとても有利な法制となっています。

 

 

コロナ渦において困っている借主へのアドバイス

 

上記で述べたように、日本の賃貸実務においては、借主はオーナーに比べて法律のもと保護されているといえます。

特に、現在のような新型コロナウイルスによる経済状況の悪化という特殊事情を考慮すれば、より借主において汲むべき事情があると判断される可能性もあります。

 

しかしながら、1ヶ月や2ヶ月は家賃なんて払わなくてもよいという横柄な態度を取ることはおすすめしません。

「3ヶ月の滞納」はあくまで過去の裁判例等からの目安であるに過ぎず、1ヶ月や2ヶ月の滞納でも解除をされることはありえます。

前述のとおり、禁止行為等との合わせ技でもって解除される可能性もあります。

 

また、新型コロナウイルスの状況下で困っていることはオーナーも同じです。

不動産のオーナーの多くは、銀行等の金融機関から融資を受けて不動産を所有しており、賃料収入が無ければ、銀行への返済ができなくなるからです。

 

したがって、家賃を払いたくても払えないという事情をきちんとオーナーに説明し、たとえ家賃の一部であっても支払うことをおすすめします。分割払いでもよいでしょう。

オーナーに対する誠意を見せることができますし、オーナーが家賃の一部でも受領すれば、万一の場合に裁判所でプラスの事情として考慮されるからです。

つまり、「信頼関係の破壊」がないという証拠を積み上げるのです。

 

賃料負担については、政府がなんらかの対応を考慮しているという報道もありますので、賃料支払いに苦しんでいる方々が、なんとかこの状況を凌げることを願っています。

 

 

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