【アメリカ不動産投資】これだけは抑えておきたい法律のいろは

【アメリカ不動産投資】これだけは抑えておきたい法律のいろは
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アメリカの不動産価格が高騰中

 

近年、日本の富裕層の中でアメリカの不動産に投資する、もしくは投資を希望する人が増えているそうです。

 

実際に、弁護士としての業務の中でも、アメリカの不動産投資に関して問い合わせを受けることが増えています。

 

好景気に沸くアメリカではここ10年近く不動産価格が右肩上がりです。

 

アメリカでもっとも信頼性のある指標とされるS&P・ケース・シラー住宅価格指数(S&P/Case-Shiller Home Price Indices)は、米国不動産の強さを如実に現わしています。

 

(出典)Advisor Perspectives

 

S&P・ケース・シラー住宅価格指数では、2000年を100として、過去又現在の不動産価格を指数化したものです。

 

現在はリーマンショック前のバブル時の価格を超えてきています。

 

 

こんなに違う日本とアメリカの不動産法制

 

ところで、日本とアメリカでは不動産に関する法制がまるで異なります。

日本で不動産投資をした経験のある方だと、はじめてアメリカの物件に投資をする場合には戸惑うと思います。

 

私自身は、日本でもアメリカでも不動産投資の経験はありません。

しかし、日本では弁護士として不動産会社のクライアントの仕事を数多くこなしてきました。

主には、契約書や必要書類のチェック、不動産デューデリジェンス、監督官庁対応といったところです。

 

しかし、留学中にアメリカの不動産法(Real Property Law)を勉強して、日本での経験だけでは全く理解できないことに愕然としました。

 

日米の主な不動産法制の相違点を以下に簡単に解説します。

 

コモン・ロー

 

 

そもそもですが、アメリカは、日本のように成文法がありません。

 

日本では、不動産に関する法律として基本法としての民法、特別法としての借地借家法などが整備されていますが、アメリカはコモン・ロー(Common Law)によって支配されており、成文法がありません

 

歴史的に蓄積されたコモン・ローを基本として、州や市によって独自に法制するような体系になっています。

そのため、アメリカで不動産投資を行おうとする場合には、コモン・ローの理解とともに、その不動産が存する州や市が定めるローカルな法律に関する理解も必要となってきます。

 

詐欺防止法(Statute of Frauds)/口頭証拠排除原則(Parol Evidence Rule)

 

日本では不動産に関する取引は口頭契約でも生じます。実際には、ほとんど取引が書面契約によってなされますが、民法は口頭でも契約は生じることを定めています。

 

アメリカでは詐欺防止法(Statute of Frauds)というルールの存在によって、不動産譲渡契約や一年を超える不動産賃貸借契約は、書面によって特定の条件を合意しなければ、契約が無効となります

 

また、口頭証拠排除原則(Parol Evidence Rule)といって、契約書に記載の無い事項については原則として契約後に主張することができないというルールがあります。

そのため、紛争防止の観点から、契約前に合意した重要事項は全て契約書に反映することが重要となります。

 

アメリカ人が契約書をとても重要視しているのは、このようなルールのためです。

 

不動産権(Estate)

 

日本における不動産の所有権に比するものとして、アメリカには不動産権(Estate)という権利が存在します。

これが日本人にはさっぱり理解できない点です。

 

日本の不動産所有権に近いのが、絶対的単純不動産権(Fee Simple Absolute)という権利です。

これは、絶対的にその人が不動産権を自由に使ったり処分したりしていいよという権利です。

 

しかし、アメリカの不動産権にはそれ以外にもいくつかの種類があります

消滅条件付権利であるDefeasible Feeという不動産権は、なにかの拍子に不動産権が失われてしまうという条件が付された権利です。

例えば、住宅用地として利用する限りマイケルさんに権利を与えるが、もし住宅用地にスーパーマーケットを建てたら、土地は返してもらうからね!という権利です。

 

また、権利保有者が生存している間に限定された生涯不動産権(Life Estate)というものもあります。

例えば、エイミーさんが生存する間だけエイミーさんを権利者とする!といったもので、この場合、エイミーさんが死んだらその不動産権はエイミーさんの子供たちには相続されず、元の所有者に戻るというものです。

 

このように不動産権は様々な種類があるので、注意が必要です。

 

賃貸借契約

 

アメリカの賃貸借契約には、日本の定期借家契約に相当するものとして、定期不動産賃貸借(Tenancy for Years)というものがあります。

住宅用アパートの契約は一年間の定期不動産賃貸借が一般的です。

 

私も何度かアメリカでアパートの契約をしましたが、全て一年契約でした。
期間の点では全く交渉ができず、一年未満で退去しても、残り期間を払い続けるか、他の人に転貸するしかありません。

日本では、一か月とか二か月の期間を設けて解約通知すれば、違約金なく解約できることが多いですよね。

この点では、アメリカのアパート契約は、どちらかというとオーナー寄りの慣習になっています。

 

転貸についてですが、日本では原則として賃借物件を他の人に転貸することはオーナーの承諾がない限りできません。

しかし、アメリカでは、契約書に明記されていない限り、賃借人はその契約を自由に譲渡(Assignment)又は転貸(Sublease)することができます

そのため、大きな部屋を借りて、そのうちの一部を転貸することで小銭を稼いでいるような人もいます。

 

もし、アメリカで大家さんを目指す場合には、賃貸借契約の際に、譲渡又は転貸を許容するのか?といった点に注意を払う必要があると思います。

 

Deed(不動産譲渡証書)

 

日本では、不動産取引を行う場合、売主と買主が不動産売買契約を締結し、その契約に基づき不動産を譲渡します。

不動産が譲渡された後に何らかの問題が発生した場合(例えば、二重譲渡だったとか、シロアリや水漏れなどの隠れた瑕疵が発覚したなど)、不動産売買契約に定める条項に基づいて解決するのが一般的です。

 

アメリカにおいても不動産売買契約が作成されます。

しかし不動産権を譲渡するに際しては、不動産権を有する売主がDeedを作成し買主に対してDeedを引き渡して、初めて不動産権が移転します

Deedとは日本語では「不動産譲渡証書」と訳されるもので、↓のような書面です。

 

(出典)Deed.com
※ 画像はイメージです

 

Deedが引き渡されれば、契約における条項はDeedに集約されます。

つまり、何かしらの問題が後から発生しても、Deedに記載された条項をベースに解決することになります。

したがって、契約に重要な条項を入れていても、それをDeedにも記載していなければ、契約の条項はDeedの引き渡し後は、無かったものとされてしまいます。

 

契約書のチェックだけではなく、Deedの記載内容もきちんとチェックしないといけません。

 

登記(登録)

 

日本では、不動産の所有者は、その不動産を登記しなければ、第三者にその不動産が自分のものであるという主張ができない場合があります。

これを公示機能といいます。

 

アメリカでは、不動産の買主は、売主から渡されたDeedを行政機関に登録(Record)することによって、日本の登記と同じような公示機能が生じます

 

(出典)Clay County Clerkof the Circuit Court
 ※ 画像はイメージです

 

ただ、アメリカの行政機関では、日本の登記制度のように情報が登記簿に集約されていません。

物件の購入者は売主の権限が真正なものか物件に何らかの負担が存在しないか(問題のない物件は、Marketable Titleがあるとされます)について、自分の責任で調査しなければなりません

到底、それらを全て調べるのは至難の業なので、通常は決済代行会社に依頼して物件のTitleに問題がないか調査してもらうのが一般的です。

これをTitle Searchといいます。

 

Title Searchと併せて、権限保険(Title Insurance)に加入し、万一Titleに問題があった場合に備える場合が多いです。

通常、アメリカの銀行で融資を得る場合には、権限保険への加入が融資のための条件とされる場合が多いようです。

権限保険は物件価格に応じて保険金額が設定されるので、物件価格が高額になれば、それに比例して保険金額も高額となります。

 

不動産投資を検討される場合には、Title Searchや権限保険も必要経費として計算しておかないといけませんね。

 

裁判管轄/準拠法

 

アメリカは連邦制の国ですので、州によって法律が異なります。

裁判等の紛争時には、原告と被告が異なる州の住民であった場合、どの裁判所が管轄(Jurisdiction)を有するのか、どの州の法律が適用されるか(準拠法の選択:Choice of Law)が大きな問題となります。

アメリカの弁護士にとってはこの点の処理が一大論点です。

 

仮に日本人がアメリカにおいて不動産投資を行う場合には、万一のトラブルを考慮に入れて、紛争時の解決方法を考えておかないといけませんが、この問題についての検討、交渉することは避けられません。

 

契約書の作成時には、不動産投資を行う州の弁護士にキチンと相談して、そのあたりの整理をつけておくことをおすすめします。

 

まとめ

 

以上、ベーシックな内容をごくごく簡単に記載してみました。

アメリカの不動産に投資をする場合、ある程度の法律知識を持っていると、契約の際にリスクマネジメントができると思います。

 

日本人がアメリカの不動産を購入するのは非常にハードルが高いのは確かですが、日本での不動産投資に比べてより大きなキャピタルゲインが狙えるという魅力があります。

私もお金さえあれば、日本ではなくニューヨークに不動産を買いたいです。

 

最後に、こちらは個人のブログ記事ですので、内容に関する責任は一切負いませんので悪しからず(笑)

 

 

 

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